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大塚家具に必要なのは和解だ。

2020.07.03

大塚家具

後継者が失敗する典型的なパターンの一つに、先代のやり方を急に変えるがある。

正直、私もこれで失敗して痛い目にあった。

大塚家具は私にとって、学びの深い企業である。

親子の対立に始まり、株主総会、兄弟関係、後継社長と社員との関係についても非常にいいケーススタディで勉強させてもらっている。

今回の失敗の原因は久美子社長の急な路線変更だろうと見ている。

もっと冷静になって考えれば正解に近い答えも今思えばあったのだ。

例えば、公衆の面前で父親を遣って退けた後の始末の悪さは想像すればわかりそうなこと。

経営権を奪取することが目的になっていては、冷静さも何もないのはわかる。

だから自分も失敗した。

父、勝久氏の降段

記憶に新しい2015年の株主総会で繰り広げられたプロキシーファイトで当時会長でした。

勝久氏が破れ、娘の久美子社長が勝利し、勝久氏は長年率いてきた舞台から退場した。

その当時は才色兼備と世間は持て囃し、退場した勝久氏を老害扱いしたメディアすらあった。

実はメディアで表面化する2年前の2013年頃から久美子氏は勝久氏と経営方針を巡って対立していたようです。

火種は資産管理会社の株の問題はもとより、今後の経営方針を巡る両者の意見の食い違いです。

その裏にはインテリア業界で快進撃を続けるニトリとIKEAの新興勢力がありました。

両者は水と油のごとく混じり合うことはなく、家族を巻き込んで真っ二つに割れました。

後継者はこの状況を対岸の火事と見るでしょうか。

いまいちど、振り返ってなぜこうなったのかを見ていきたいと思います。

なぜこうなったのか

2015年の通常株主総会での出来事。
争点は久美子氏側が提案する人事案と筆頭株主である勝久氏の人事案のいずれかを採択する委任状争奪戦です。

もちろん、久美子氏の提案には勝久氏と勝之氏の名前はありません。

一方、勝久氏の人事案には久美子氏ら現職取締役の名前はない。

ほぼ満席を埋め尽くす総会会場では、「悪い子供を作ってしまった」「久美子を社長に選んだのは失敗だった」「久美子が生まれた時は苦労した」など、公衆の株主の前で親子の「情」で訴えた勝久氏と千代子氏に対して、「上場企業であるコーポレートガバナンスの問題です」とピシャリと「理」で説いた久美子氏でした。

感情的になる父と母に対して、理性と冷静さを失わず淡々と状況を説明していく久美子氏。

久美子氏に軍配が上がると誰の目にも明らかでした。

結果は予想通り、久美子氏の勝利だった。

その時、新時代の後継者の幕開けとも思い、感動すらしたのだが、公衆の面前で恥を書かされた、両親の侘しさも同時に感じていました。

2015年に代表者が久美子社長に交代され、就任記念セールなどイベントをいくつか立ち上げて、若い美人社長は世間から脚光を浴びた。

しかしその光が照らされると同時に深く重い影を刻んでいきます。

2015年12月の決算ではお祝儀効果もあり経常利益率1.1%ながらも黒字を計上しますが、その後、なにかが狂ったように落ち続ける売上と資金の流出が止まりません。

決算期 売上高 経常利益
2015年12月 580億 6.33億
2016年12月 463億 ▲44億
2017年12月 411億 ▲51億
2018年12月 374億 ▲53億
2020年4月 349億 ▲77億

 

結果として、ヤマダ電機に支援されてもまだまだ資金の流出が止まらず、これからもその状況から抜け出せずにいます。

2015年から2016年のその差が50億円!

この辺りで、

「なんか私の意思決定間違ってる!」と方向修正しないといけない久美子社長ですが、この辺りは外部にいると推測でしかありません。

周りに忠告する役員やコンサルタントがいなかったのでしょうか。

それとも再三の忠告を久美子社長は聞き入れなかったのでしょうか。

問題は何か

①そもそもこのビジネスモデルは間違っていた。

大塚家具が長年かけて培ってきたブランドの毀損。

大塚家具といえば、どちらかと言うと高級路線です。

家具を購入する時はいつも満たされている時や新しく始まる節目です。

例えば、新築で家を建てる場合、建築予算の毎月のローンや頭金とは別に家具購入予算を二本立てで組んでいるのではないでしょうか。
少し頑張った予算だけど一生物だし奮発しようと言う若い夫婦も一定数います。

ちなみに、僕が25年前に家を建てた時も予算は厳しかったけど大塚家具で輸入家具購入しました。

今、大塚家具で買おうかとなると、なんか躊躇してしまいます。

なぜでしょうか。

中途半端感でしょうか。

あとは、やはり、あのお家騒動ですね。

親子が泥沼の喧嘩してる会社で今から幸せ満喫しようとしてるのにそんなところで家具を買おうとは思わないですよね。

②コンシェルジュを廃止することでまとめ買いの減少

確かにコンシェルジュがついてまわると気軽に見て回れる自由さはなくなり、ニトリやIKEAに流れてしまう危機感は感じます。

でも、安心感と言う点では自分の担当の〇〇さんが責任持ってアテンドしてもらう方が落ち着くのではないでしょうか。

高い買い物するわけですから店舗側の責任者がついた方が顧客の安心感になります。

私もそういえば大阪のショールームで優しいコンシェルジュさんが商品説明から見積もりまで目の前でしていただいて、その当時、消費税3%から5%に変わったばかりで間違えて3%で計算して、慌てて修正するお茶目なコンシェルジュさんでした。

でも、高級家具は頑張ってきた自分にご褒美という納得感があった。

③住宅会社によるまとめ買いの減少

住宅会社との提携によってお施主様を住宅会社の営業マンや社長が車で案内してくれました。

その分、住宅会社にキックバック払えば大塚家具自ら営業しないで済むんで一石二鳥です。

④ニトリ路線が躓きの原因

大塚家具もニトリも原価率は45%だそうです。

売上粗利は55%で悪くありません。

ニトリは薄利多売かと思っていたら違いました。

あと、ニトリと決定的に違うのが商品回転率なんです。

貸借対照表の「商品」を「売上原価」で割ると大塚家具は0.66年(8ヶ月)ニトリは0.2年(2.4ヶ月)の回転になります。

ニトリの方が約3倍早くものが売れて、資金が潤沢に回り、新しい商品がどんどん入ってくる循環です。

高級家具というイメージを引きづりながら高回転ビジネスに移行しようとしたことは失敗の原因です。

消費者からどう我が社は見られているかをゆっくり考える時間が欲しかったところです。

これからの戦略

2021年までに黒字化

家電、家具、リフォームの専門コンシェルジュを育てるしかないでしょう。

この教育された専門コンシェルがワンストップのメリットと他社との差別化やお得感を説明し、顧客を納得させられるかどうかにかかっていると思います。

そして、究極の戦略は

久美子社長は勝久氏と和解して、落ち込んだイメージを逆手にとって娘が両親にキチンと謝罪して仲直りしていくストーリーを作り上げてイメージ回復を狙うしかないでしょう。

今さら遅いかも?

いやいや、親子の亀裂はそれくらい時間がかかるものなんでちょうどいいでしょう。

若い世代からすれば、ダサいかもしれないが、人生の酸いも甘きも経験してきた世代には、手間も金もかかった自分の子供を投影するように「応援してやろう」という気配が出てくるのではないでしょう。

課題も残される

ヤマダ電機は「住まいの全般をワンストップでできる」を強調していますが、それほど消費者にとって強みになるだろうか。

まとめて1社に丸投げすれば手間は省けますが、手数料が加算されることを考慮すると当然ながら全体の値段は上がる。

昔と違い、若い夫婦などは地元の知り合いの工務店で直接見積もりを依頼し、家電なんかはネットで一番安いところを探して自分でアレンジするスキルやそれに費やす時間はある。

それに対して高齢者は家電や家具をまとめ買いする層はそれほどいない。

一定の需要はあるにしても多少高くても、御用聞きも兼ねた地元の電気屋さんに依頼するだろう。

それの方が安心だし、おしゃべり相手にもなってくれるので地元の電気屋さんはこのようなしっかりとしたリピーターがついている。

 

まとめ

失敗した原因は急に路線変更の舵を切ったこと。

それによってとんでもない累積赤字を出した。

失敗を認めて先代のビジネスモデルを復活させる。

復活させるにはまずは和解である。

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