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キッコーマンの家族憲章

2020.07.20

家族憲章

今日は家族憲章について語りたいと思います。

家族憲章と言っても、なんか家父長的で今の時代に合わないんではないか?なんて、話題も出てきそうです。

本当にそうなんでしょうか。

家父長制とまでは行かないにしても、ジェンダー理論が活発な今の時代にあっても、同族企業が会社を守るために必要なメソッドの一つとして、あえて今の時代だからこそとり入れたいのが家族憲章だと思います。

親族憲章やファミリー憲章とも呼ばれていますが、専門性の高い分野ですので一般的にはまだまだ認知されていない分野です。

実は、24年度に一万円紙幣が刷新される際の人物で有名な渋沢栄一氏が、家族憲章の起源とされます(諸説あります)。栄華を誇る渋沢栄一氏ですが彼のウラの姿と家族憲章の関わりについては後日改めで記したいと思います。

キッコーマンと家族憲章

M&Aセミナーや事業承継セミナーに行くとよく事例としてあげられるのが、キッコーマンです。キッコーマンは今から102年前、千葉県野田市のしょうゆ醸造家8家が合併してできた会社です。8家のうち、茂木家が6家と、高梨家、堀切家から成ってまして、お互い親戚でした。

日本には今でも約1200社のしょうゆメーカーがありますが、もともと、キッコーマンは関東のローカルなしょうゆメーカーで、
合併によって規模が拡大し、工場を近代化して関西へ進出したりして、ナショナルブランドへ成長することができたと言うことなんです。

一方で、この8社の合併にはデメリットもありました。そりゃそうだ、なんかややこしい匂いがプンプンする。

8社の顔ぶれが合併によって、「誰を社長をするのか」で揉めます。各役職が減るわけですから、人間関係が難しくなる。また、8家ともなると社員が同族ばかりになり、親族外の人が入社しにくいことも予想されます。こうしたデメリットを避けるため、8家は不文律(明文化されていない法律)を作ったんです。

これが今でいう、家族憲章なんです。

明文化が重要

この不文律が、今でもファミリービジネス的な要素を残しつつ、経営がうまく回っている要因なのです。

この不文律ですが、各家は1世代1人しか会社に入れないという文言が含まれます。兄弟姉妹が複数人いても、入社できるのは1人だけと決めました。入社できても将来役員になれるのは能力次第で、その役員の中から最適な人を社長にする。

もう一つの要因は、経営の近代化を進めたことです。

近代化のきっかけは、合併後の大規模ストライキでした。戦前の3大ストライキにも数えられ、218日間にわたって工場が止まりました。

逆境が親族の絆になる

難航を極めた労使交渉も最終的に会社側の勝利となりましたが、会社にとって大きな教訓を残したのです。

親族合併は諍いばかりのデメリットばかりではなく、強固な絆で難を乗り越えることができたのも親族同士の強みなのかもしれません。経営者の家庭という環境でしっかりと子供を教育する難しさは、万国共通です。

キッコーマン8家の場合、表には出さないものの親戚同士の競争意識があり、1世代1人の不文律もあって教育にはどこも大変熱心でした。

子供同士も互いを意識して切磋琢磨し、社長は創業家からとは限らないから、創業家以外の社員との競争もあると言うことです。経営者としての資質が乏しい人や、準備ができていない人が、事業を承継するのが不幸の原因だと。

ファミリービジネスを長続きさせる上で一番大事な点は、争いを未然に防ぐ不文律である家族憲章の制定と後継者の教育です。

後継者教育でも競争戦略や経営分析などに重点が置かれます。確かにそれも重要です。しかし、もっと心や核の教育が必要だと感じてます。

 

確かに、そうですね。

私も同族経営という家庭環境に育ち、後継者として教育を受けてきたつもりでいましたが、知識や小手先のスキルばかり身につけて、肝心の心や核の部分が育っていなかったと分析します。

本来なら、心の部分は自分で気づき、自己研鑽していくのが理想ですが、なかなか思い通りには行かないのが世の常ではないでしょうか。

残念ながら、私は同族企業に身を置きながら気づきませんでした。いい大人がなぜ気がつかない。なかなかね、、指摘されないと気がつかないことってあります。失敗しないとわからない事って、ありますよ。心の迷いや、選択ミス、その瞬間や場の状況判断。ここに経営に関わる親族どうしのガバナンスがあれば、大きく歪むほどの修正を必要としなかったでしょう。

20年前に戻って、家族憲章に出会いたかった。そして、その重要性について話してほしかった。そうしたら苦しむ人はいなかったのに、と切実に感じます。

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