後継者に必要なのは第2創業
2020.08.25
最近の私の癖の一つに、街で若手のビジネスマンを見かけると、3つのジャンルに分けて観てしまいます。サラリーマン、起業家、後継者と大きく3つに分けて観てしまうのです。そうするとある特徴が見えてきます。
私は18年間、後継者の経験がありますので、特に後継者はわかりやすい特徴があると思っています。
青年会議所と後継者
先日、とある飲食店で30代くらいの男性が6人で食事をしていました。私は彼らを見て一瞬にしてJC(青年会議所)と気がつきました。JCは20歳から40歳までの青年経済人の公益社団法人です。彼らが纏っている雰囲気は保守的でサラリーマンや起業家にはない清廉された育ちの良さがあります。
よく観察していると「ロム」とか「ブロ長」などの専門用語が交わるので、JCで間違っていないと確信しました。おそらく何かの会合の帰りに食事でもしようという流れになったのでしょう。新橋で飲んでるサラリーマンとは一線を画するどこか緩やかな、そして懐かしい90年代初頭の元気の良さがそこありました。
それにしても彼らは実に楽しそうによく笑う。甲高い声でキャッキャと笑う一番年下と思われる彼はまるで孵化したてのヒナのようです。あと、先輩の意見に忖度して笑うものまでいて、見ていて楽しそうで微笑ましくなる。先輩風吹かすつもりはないけれど、「おいおい時代は変わったんだよ」と声もかけたくたりました。
起業家という生き物
最近、若手の起業家と仕事する機会が増えました。私の知る最も若い起業家は29歳。次に若いのが31歳。一番年長でも40歳で平均して35歳前後です。
Tシャツにジャケット、タイトパンツ、MacBookProが彼らの定番です。彼らは他とは違う何か特別な空気を纏っています。軽く触れると火傷しそうな少し危険な空気です。全員がそれとは言いませんが、彼らは他人に忖度しない。自分の思ったことははっきり言う。相手の間違いも同時に指摘する。
サラリーマン経験が少なく、或いは学生上がりで起業した彼らは社会の慣習に染まっていない。若くして組織や人に頼らず盲滅法でやってきたので他の同年代よりも失敗の数は多い。失敗の数が多いだけ回避する方法を知っている。そして図太い。金融機関から虫ケラのような扱いを受け、取引先に騙されるなど、毎日悔しい思いと不安と恐怖の時期を乗り越えた人間のみが纏える雰囲気が共通して彼らにあると思うのです。
同時に彼らはそんな苦しい経験を乗り越えてきた自信も放っています。協調性や融和を正面から否定する結果、社会から投げかけられるのは経済性と言うトレードオフで成り立っています。
後継者に必要なのは第2創業
私も僭越ながら、後継者を18年経験して、3代目社長としてやってきたが失敗した。やってみてわかったことだが、私は後継者向きではなかった。だから跡継ぎの舞台をさっさと降りることにした。
そして次は起業に挑戦した。年齢8掛けを標榜する私にとって歳のせいにはしたくないが、はっきり言ってこの歳で起業は辛い。年齢に関係なく起業は甘いもんじゃない。いくら前向きでポジティブに考えてもうまくいかないことの方が多い。だから毎日悩み考え暗闇の中でもがき続ける。元社長なんかのプライドも投げ打って、成長している30代の起業家の叱責にも素直に耳を貸すようにする。(この前なんか、36歳の4期目の経営者に喫茶店で40分も説教された^^;)
会社の口座開設するのに挨拶に行っても支店長はおろか担当すら会ってくれない。悔しいけど、起業家としては私は後発だ。仕方がない。そんなもんだ。
しかし、このような経験を経て思うことは、これからの後継者にはやはり第2創業は必要だと感じるのです。特に青年会議所に入会している若い後継者は処世術を学ぶのと同時に起業家精神を持っておいてほしいと思います。
これから先、業界や会社がどうなっていくかわからない状況で組織や慣習に頼らずに自分で集客、開拓できるスキルとメンタルが必要になると思います。コロナ禍で青年会議所も深夜まで続いた会議や飲み会も変わっていくのでしょう。
もし会社と個人に余裕があれば青年会議所で理事長以上を目指し処世術を学ぶのもいいでしょう。本業とJCと家庭の3足草鞋は大変ですが、私のように中途半端に青年会議所に籍を置くのなら、今の時代なら退会しても問題ないでしょう。
親父の会社を一回辞めてみれば?
少し乱暴な言い方ですが、青年会議所を卒業したのち一旦会社も卒業して、起業することを提案します。会社とは全く別組織にするために、籍を抜いて単独でやるということが重要です。
籍をそのままにして新規事業として立ち上げた場合、ほとんど失敗します。会社から支払われる固定費を回収できずに債務超過になってしまう可能性が大きいからです。ですから、一旦籍を抜いて期間限定でやってみる。
3年とか5年で結果を出せなければ、才能がなかったと諦めがつくでしょう。投資した時間と金は経験という価値を持って返ってきます。
注意すべきは所有している後継者の自社株を戻してしまうと、いざ復帰するとなった場合はややこしいことになるので、株はそのままにして籍を抜きます。起業したらできる限り出戻りは封印して、絶体絶命の状況を作るということが肝心です。なかなか実現不可能な話ですが、効果は絶大だと思います。
その前に家族の理解が一番の壁になりそうですね。