健常者の勘違い
2020.12.30
映画「閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー」原作 帚木逢生(ははききほうせい)を鑑賞して感じたことです。
事前にあらすじは読んでました。
ネタバレは他のサイトを参考にしていただいて、それぞれの事情を抱えた人生を精神病棟内で描かれる人間模様です。
死刑執行から奇跡的に生還し、その時の脊髄損傷で車椅子生活を強いられる主人公の秀丸(笑福亭鶴瓶)
幻聴とパニック障害で妹夫婦から強制入院させられたチュウさん(綾野剛)
義父から暴行を受け、ついには母親からも捨てられ帰るところのない由紀(小松菜奈)
最後のシーンは秀丸が車椅子から転げ落ちて、立ち上がり自立しようとするが、失敗し、また諦めようとしない。周りから熱い注目を浴びるシーンでエンドロールとなる。
まず、障害者をテーマにした作品なので、当たり前かもしれませんが、来場者に何らかの障害をお持ちの方々が多いということ。
足に歩行具をつけてらっしゃる方や脊髄が片方に大きく歪んだ方。あと、車椅子で来場され補助員の方と同行されている方。
映画館の入り口を出て、高齢男性の車椅子を押す親子と思しき娘の一言が気になりました。
「お父さんごめんね。サスペンスだったわね。ショックだったでしょ。また今度、違うの観に来ましょうね。」
確かに。
この映画は冒頭から死刑執行のシーンから始まる。これはかなりショッキングです。配給サイドも視聴者への配慮から、かなり抑え気味ではあるが、レイプシーンや暴力もある。
で、ひとつ気づいたんです。健常者が勘違いする見方。
健常者からするとサスペンスやバイオレンスに、映る傾向があるかもしれませんが、障害をお持ちの方にすれば、共感するところは多かったのではないでしょうか。
障害をお持ちの方は健常者には見えない世界観があって、自由を制限された生活の中でも、明日への希望を捨てないという想いがあると思う。
作者はこんな想いを伝えたかったのではないでしょうか。
パニック障害に悩んでいたチュウさんは退院し、就職してその働きぶりを認められる。レイプのトラウマで病んでいた由紀は看護助手に成長していた。そして紆余曲折ありながら明日への希望を捨てない秀丸。
精神科医である作者の見事な視点で描かれた、素晴らしい作品でした。
サスペンスではなく、それぞれの事情を抱えた人たちが抱く希望という目線で、鑑賞するところがポイントですね。