あれから30年
2021.11.06
私が学生の頃。当時つきあっていた彼女がいました。
とある居酒屋で、彼女と飲んでた時の話。
私は自分の生い立ちや将来は地元に帰ってアトツギになるかもしれないと告げました。
彼女は酔った勢いもあって「やったぁー、ワタシ社長夫人〜、将来ベンツ〜」とはしゃぎ出したのです。
私は「そんなに甘いもんじゃない!」とその場で怒鳴りつけてしまいました。
言いすぎた!と思った時はすでに遅し。
彼女は溢れんばかりの涙で私を睨んでます。
わかってるけど、夢くらいみさせてほしい、と後から聞かされました。
彼女のお父さんは小さな建築会社を営んでいました。
すぐに安請け合いするお人好しのお父さんは資金繰りに窮して倒産させてしまいます。
その時の家族が置かれた惨状や母親の苦労を嫌という程見てきたのです。
一度くらいは社長夫人の裕福なイメージに浸りたかった。
その時の言葉にできない複雑な気持ちを思い出しました。
あれから30年。
「お前は変わったな」とあの頃の自分が、寂しそうに去っていく足音を聞いた気がしました。